皆さんこんにちは。

今回のブログではALPINA B10のクラッチ交換についてご紹介させて頂きます。

クラッチ交換の内容に入る前に、クラッチ交換の原因としてよく聞かれる「クラッチ滑り」について少し解説しますね。

 

皆さん「クラッチ滑り」という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、この「クラッチ滑り」がどういった症状なのかご存知でしょうか?

ず~っとマニュアル車に乗られている方で「クラッチ滑り」を経験済みの方はもちろんご存知だと思いますが、マニュアル車経験が浅い方や最初からAT車に乗られている方は言葉だけ知ってるという感じだと思います。

私は昔乗っていた車が1.6Lの国産マニュアル車ではありますが、「クラッチ滑り」の経験は無いため言葉だけ知っているというレベルだったので工場長に聞いてみました!!

 

「クラッチ滑り」の典型的な症状は、シフトアップやシフトダウンをした際のタコメーターのエンジン回転数の動きなどに現れるそうです。

加速時にシフトアップすると回転数が落ちるはずが逆に上がる・・・アクセルを入れても回転数だけ上がって進まない(パワーが出ない)。

減速しようとシフトダウンすると、通常であれば減速とともに回転数も徐々に下がるはずなのに回転数が中々下がらないうえに減速しない(エンジンブレーキが利かない)。

燃費が悪くなるといった感じ・・・との事。

 

では、なんでこんな症状になるのか?なんですが、これはクラッチの役割を知れば”ああ、なるほど”って感じで理解できます。

 

クラッチの役割をざっくりと一言で言うなら「エンジンの動力をタイヤに伝えるための中継役」といったところでしょうか。

エンジン内の爆発エネルギーはピストンシリンダーからクランクシャフトを通して回転エネルギーに変換されています。

エンジンで作られた回転エネルギーは、中継役となるクラッチを還してフライホイール→ギアボックス→プロペラシャフト→デフ→ドライブシャフト→タイヤの経路で伝達されます。

これを絵で表すとざっくりとこんな感じなイメージになります。

※因みに、クラッチの動きを分かりやすくするためエンジンと分かれたような絵になっていますが、実際にはフライホイール(リングギア)はエンジン側に付いていて、ギアボックスもエンジンに繋がっています。

Image1m

上の絵ではクラッチ板とフライホイールが離れていますが、この状態がクラッチを切った状態のイメージだと思ってくださいね。

クラッチを切るとクラッチ内のレリーズベアリングがスライドして、クラッチ版が浮いた状態になるんです。

この状態ではエンジンとタイヤは繋がっていないことになるので、エンジンで作られた回転エネルギーはタイヤには伝達されません。

ギアを入れてクラッチを繋ぐと、下図のようなイメージでクラッチ板とフライホイールが繋がることでエンジンの動力がタイヤへと伝達されます。

Image2

クラッチ接続の際の半クラ操作の場合などについては取りあえず置いといて・・・

要するに「クラッチ滑り」とは、繋がったにも関わらずこのクラッチ板が中で滑って空転しちゃう状態を指しているんです。

クラッチ板が滑って空転するという事は、エンジンからの回転エネルギーがフライホイールより後ろにちゃんと伝達されなくなりますので、結果としてシフトチェンジで加減速しにくい状態となります。

「クラッチ滑り」の状態とは、言い換えればエンジンから供給されるエネルギーの伝達ロスが発生している状況となるため、当然のことですが燃費も悪くなりますしパワーダウンも生じる訳です。

 

日本車の場合、クラッチ滑りの原因はクラッチ板の摩耗が多いそうですが、BMWの場合はクラッチ板が分厚く作られているためクラッチ板が摩耗するというよりは、熱によってクラッチカバーの鉄バネが焼けてクラッチ板をうまく押せなくなるという状況が原因としては多いそうです。

BMWのクラッチの耐久年数や交換サイクルの目安はBMWとして特に明確に定義されていないそうで、基本は「クラッチ滑り」などの違和感を感じたら交換というスタンスでいいそうです。

クラッチ部品の摩耗やダメージはクラッチの使用頻度や使用状況によって大きく変わるそうで、サーキット走行などをしていなくても半クラ操作が多かったり、停車中にクラッチを切ったままでギアをニュートラルに戻さないといった運転がクラッチパーツを酷使する事になるそうです。

と言ってもBMWのクラッチはそんなに軟じゃないということなので、そこまで気にする必要は無いそうですですが、気になるようなら10万キロを目安に予防を兼ねてリフレッシュを検討してください。

 

と、前置きで「クラッチ滑り」について長々と説明してきましたが、そろそろ本題となるALPINA B10のクラッチ交換のお話に戻したいと思います。

 

このALPIA B10は、クラッチのフィーリングが気になるとのことで入庫されました。

気になるフィーリングというのは、具体的にはクラッチを切った際にジャダー(異常振動)が出るというもの。クラッチも滑っている状態でしたので12万キロ超えという走行距離も考えクラッチ交換となりました。

クラッチを切った際のジャダーや異音といった症状ではレリーズベアリングが摩耗しておかしくなっている場合が多いらしく、距離数に関係なく半クラ操作の多用や停車時のクラッチ踏みっぱなしといった運転がレリーズベアリングへの過剰負荷となり、その結果としてレリーズベアリングの故障確率が上がるそうです。

写真は既にクラッチ交換された後でギアボックスまで取り付けられていますが、クラッチ部品はエンジンとギアボックスの間に挟まれているので、交換の際にはマフラーやギアボックスを取り外した上で交換する形になります。

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交換途中の写真が見たいという場合は、過去ブログ「ALPINA B3 3.2のミッション換装 」を見てくださいね。

そしてこちらは今回交換されたクラッチ部品の写真となります。

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クラッチ板の溝も浅くなっていて結構擦り減っていることが分かります。

クラッチ交換の場合、クラッチ板のみの交換ではなくクラッチセットと言われるクラッチカバー・クラッチディスク・レリーズベアリングの3点セットでの交換となります。

車種によってはフライホイール側にバネ機構が付いているものもあるそうで、その場合はフライホイールを含めた4点セットでの交換となるそうです。

今回はクラッチセットのみのクラッチカバー・クラッチディスク・レリーズベアリングの3点セットでの交換となりましたが、気になっていたというクラッチのフィーリングは解消されました。

MT車にお乗りの皆さん、クラッチからの異音や「クラッチ滑り」の症状が出ているかも知れないと思われる場合は、一度是非つたえファクトリーへご来店頂きご相談下さい。

 

私達は、長く快適なBMWライフを満喫いただくため、トレーニングを受けたメカニックがメンテナンスさせて頂きます。
他店でBMWをご購入された方でも「Tsutae’s Check Up」でBMWの診断をさせて頂きます。

つたえファクトリーでは、法定12ヵ月点検以上にBMW専用の点検項目を設けた「Tsutae’s Check Up」をご提供しております。この点検内容は、「即交換」「早期交換」「予備交換」と3段階に分けた診断書をお渡しし、今後のメンテナンス計画についてコスト面も踏まえながらメンテナンスさせて頂きます。

私達はBMWを身近に感じているパートナーとして、様々なご要望にお応えして参ります。

それでは皆さん、また次回お会いしましょう!!